合同合名会社と株式会社の違い

高野義憲

合名会社・合同会社と株式会社とは、ざっくりと以下のような性質の違いがあります。

「株式会社」はもともと、出資者(株主)と、会社を経営する者(取締役)が別々の人物であることを想定しています。Aが会社経営をしたいが、資金が無いという場合に、出資をしてくれる人を募り、賛同者BCDが出資をしあって会社を作り、Aに報酬を払って会社を経営してもらい、利益が上がればそれをBCDに配当するというものです。
ただ、もしもAが経営に失敗して利益が上がるどころか借金で破綻してしまった場合に、BCDも借金を支払う義務を負うとすると、出資しようという者がいなくなってしまいます。そこで株式会社では、経営破綻した様な場合、株主(出資者)はすでに出資したお金は返って来なくなるものの、それ以上に会社の借金について支払う義務は無いものとしています(有限責任)。出資した金額分さえ覚悟すれば、それ以上にリスクは負わないものとして、なるべく多くの者が出資しやすい様にし、資本の大きな会社を作ることを想定しています。

これに対して、「合名会社」は、志を同じくする仲間同士で出資をして、しかもその全員で会社を経営していくというものです。出資者がみんな経営者になる点が株式会社と異なります。ABCDの全員が出資をして経営も全員でします。利益が上がれば全員で分け合い、反面、損失が出れば全員で負担します(無限責任)。そのため、互いに信頼し合える少人数での会社を想定しています。

「合同会社」は、その中間的な会社で、出資者がみんな経営者になる点で合名会社と同じですが、会社の借金について、出資した分を超えて個人的に支払う義務は負わない(有限責任)点で株式会社と同じです。出資した金額分以上のリスクは負わないものとして会社を作りやすい様にしています。

誠に申し訳御座いませんが、現在当事務所は人手不足のため、会社・法人登記については、ご紹介以外の新規の受付を控えさせて頂いております。
以下は一般的な手続きのご説明として、ご参考頂ければ幸いです。 

合名会社・合同会社のメリット・デメリット

上記のとおり、「株式会社」は、自ら経営はしないが、出資をして配当やキャピタル・ゲインを得たいと考える、大勢の出資者から資金を集めて、規模の大きな会社を作ることを想定しています。これに対して、「合名会社」や「合同会社」は、少人数の志を同じくする仲間が集まって会社運営をしていくことを想定しています。
 ただ、実際には、上場企業以外の「株式会社」のほとんどは、出資者と経営者(取締役)が同じです。平成15年より以前は、株式会社を作るには出資者(株主)7人以上、経営者(取締役)3人以上必要であったため、そもそも出資者は2人しかいないとなると株式会社を選択できなかったのですが、現在は、株主も取締役も1人でよく、1人で株式会社を作ることができます。

 合名会社・合同会社のメリットは?

1.合名会社の出資に関しては、金銭等に限らず信用や労務等も出資の目的とすることができ、定款で取り決めることによって出資金額にかかわらず、社員が提供する技術力などを考慮して出資の少ない社員にも同額の利益の配当をすることも可能です。ただし、有限責任社員の出資については金銭等に限られるため(会社法576条1項6号)、有限責任社員で構成される合同会社は基本的に金銭等財産の出資となります。

2.設立に際しての手続きは定款につき公証人の認証を要しない(そのため認証費用もかからない)ため、株式会社と比べると簡単かつ低コストで設立できます。

Ex 株式会社の設立費用 
  定款認証手数料 5万円+登録免許税15万円+登記事項証明書取得費等+報酬=29万円  

  持分会社の設立費用 
  定款認証手数料不要+登録免許税6万円+登記事項証明書取得費等+報酬=15万円

3.株主は、それぞれ持っている株式数(言い換えれば出資金額)により株主総会における議決権数が決まりますが、社員は誰がいくら出資したかにかかわらず、行使できる権利は一人一票となります。

4.株式会社では、出資者(株主)と業務執行者(取締役)が別々であるため、株主総会による承認が必要なときは、株主総会の開催日を決定し、招集通知を出したりと、非常に手間や期間もかかります(会社法により招集の方法、期間などが決められています)。それに対して持分会社では原則出資者全員が業務執行者のため、そのような手間がなく、機動性のある柔軟な経営ができることなどが挙げられます。

合名会社・合同会社のデメリットは?

1.社員間の信頼関係が強い分、一旦社員間で対立してしまうと会社の経営が立ち行かなくなってしまったりします(この点、株式会社であれば役員は任期があり、また、株主総会で解任するといった対応ができます)。

2.持分会社は認知度も低いために相手先によっては取引の制限があるかもしれません。

3.持分会社のうち、合名会社では、会社が抱えた負債は無限に背負うこととなります(無限責任社員といいます)。なお、合同会社では、出資の範囲内で責任を負うこととなります(同じく有限責任社員といいます。この点は株主と同じです)。

合名会社・合同会社・株式会社の比較表

 

持分会社

株式会社

合名会社

合同会社

     

出資者の責任

無限責任

有限責任

資本金の額

登記不要

登記必要

設立時の公証人の認証

不要

必要

貸借対照表の公告

義務なし

義務あり

定款変更決議の要件

原則、社員全員の一致

特別決議(議決権の過半数出席の、3分の2)

持分・株式の譲渡

原則、社員全員の承諾を要する

原則自由

利益の配当

定款に定めれば柔軟な配当が可能

原則、出資額に応じて配当

 

 

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